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前橋地方裁判所 平成5年(ワ)49号 判決 1997年6月09日

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

理由

【事実及び理由】

第一  請求

被告は、原告に対し、金二五三四万七九九六円及びこれに対する平成二年一月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

本件は、証券会社である被告からカントリーファンドであるオーストリアファンドを購入した原告が、右取引に際しては被告の従業員から虚偽の事実を告げられたり、仕切を拒否されたり、必要な説明もなされなかったが、それは不法行為に該当するとして、被告に対し、それによって原告が被った損害の賠償を請求している事案である。

一  争いのない事実等

1 被告は、証券取引法により証券業の免許を受けた証券会社であり、高崎市八島町五八番地の一に高崎支店を置いている。

2 原告は、平成二年一月一八日当時、群馬県渋川市に本店を置く株式会社甲野商店(昭和三三年一二月二五日設立、平成六年六月一日「株式会社甲野」に商号変更、資本金七〇〇〇万円、以下「甲野商店」という。)の代表取締役社長をしていたほか、関連会社七、八社(総従業員数八、九〇名、グループ全体の年間売上は約四〇億円)の社長をしていた。甲野商店は、それまでは鉄鋼、機械及び合成樹脂製品の販売、上下水道資材及び配管用資材の販売、水処理装置の販売及びその工事の請負、暖冷房及び給排水工事の請負を主たる目的としていたが、昭和六三年一一月二二日に定款を変更し、会社の目的を大幅に拡張し、その中には株式投資や金、銀、白金その他貴金属の販売等も加えられた。また、甲野商店は、平成元年から同四年まで毎年二〇億円以上の売上高を有し、平成五年頃は県内同業者中三位をしめる優良企業であった。

3 原告は、昭和五九年一一月頃から、被告会社高崎支店に口座を設けて被告と取引を開始し(信用取引は昭和六一年八月二日から)、平成三年六月頃までの間に五七回にわたって株式、外国株式、転換社債、国債、ワラント等の証券取引をしたが、取引額は一〇〇〇万円単位のものも多く、一日の取引額が一億円を超えたこともあった。また、原告は、昭和六三年一一月からは甲野商店名でも被告と取引したほか、大和證券高崎支店との間においても、少なくとも平成元年二月以降多数回にわたる証券取引をおこなってきた。

4 原告は、被告高崎支店従業員土屋秀晶(以下「土屋」という。)を介して、平成二年一月一八日、被告から外国証券であるオーストリアファンド六五〇〇株を買受け(以下「本件取引」という。)、同月二三日、右買付価格金二三一三万九七九六円及び手数料二〇万八二〇〇円合計二三三四万七九九六円を被告に対し振込送金の方法により支払った。

5 オーストリアファンドは、いわゆるカントリーファンドの一つであり、カントリーファンドとは、特定の国または地域の有価証券に投資することを目的として外国で設立されたクローズド・エンド型の会社型投資信託である。会社型投資信託とは、有価証券投資を目的とする株式会社を設立し、投資家はその会社が発行する株式を取得することにより、有価証券投資で得た運用益を配当の形で受取る仕組みのものである。会社型はさらに発行株式の買戻し請求ができるかどうかで、それができるオープンエンド型と、それができないクローズドエンド型に分けられるが、カントリーファンドは、株式の買戻し請求が認められないクローズド・エンド型に属する。

カントリーファンドにはその性質上次のような特色がある。

<1>株式を換価するには、取引所や店頭市場などでの売買に限られ、その価格は一株当たりの純資産価格とは直接関係なく、需給関係によって大きく左右される。<2>特定の国や地域の有価証券に投資することを目的としているため、投資するに当たっては、カントリーファンドの仕組みについての理解が必要であるほか、投資対象国の政治、経済状況や投資の実態なども十分に把握しておく必要がある。<3>カントリーファンドは、主として外国の取引所に上場しているため、その売買には当然為替が関わってくるのであり、為替相場が投資結果に大きな影響を与えることになる。

6 外国株式の取引(売買)には大別して三つの方法がある。一つは、我が国の証券取引所の上場の外国株であり、我が国の証券取引所で取引される。二つ目は海外委託取引であり、海外の証券取引所に上場されている株式の取引を国内の証券会社が取り次ぐ方法である。三つ目は、国内店頭取引であり、これは証券取引所における取引ではなく、証券会社と投資家が相対で、すなわち一方が売手、他方が買手となって取引をおこなうものである。店頭取引の場合は取引所取引と異なり、取引価格はある時点で一物一価となるのではなく、証券会社が取引の成立状況、顧客の引合い状況等を考慮の上、独自に決定する。本件オーストリアファンドの取引は、被告が保有していた国内非上場の外国株式を、被告が売手となって原告に売却したものである。

二  争点

1 本件取引が土屋の欺罔行為によるものであるか否か。

2 土屋は、原告の売却指示に従わなかったか否か。

3 本件取引が証券取引に関する法規制に反し公序良俗に反するといえるか否か。

4 原告の被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求権が時効により消滅したか否か。

三  原告の主張

1 被告会社の不法行為

(一) (詐欺行為)

土屋は、平成二年一月中旬頃、原告に対し、本件取引を勧誘するにあたり、「一週間か一〇日で絶対に儲かる。」とか、「人気が高くてやっと確保できた。」などと執拗に虚偽の事実を申し向け、原告をその旨誤信させて本件取引契約を締結させた。また、土屋は、その後も原告に対し電話で、「オーストリアファンドはストップ高が続いて整理ができない状態だ。」などと虚偽の事実を述べ、自らの詐欺行為を隠蔽し続けた。

(二) (仕切拒否)

原告は、平成二年一月三一日、被告会社高崎支店に電話し、土屋に対し、オーストリアファンド全部売却の意思表示をした。しかるに、土屋は、原告の右指示を無視して売却手続を行わなかったが、これは委託者の指示に従うべき義務に違反したものであり、不法行為に該当する。

(三) (証券取引における公序良俗違反)

証券取引に関しては、証券取引法等の法律をはじめとして、省令、大蔵省通達、証券取引所の定款・受託契約準則その他の諸規則、日本証券業協会の店頭株式売買規則等の公正慣習規則等の諸規則、これらに基いて定められた各証券会社の各種取引開始基準等によって法規制が加えられている。

これらの法規制の目的はいうまでもなく投資者保護にある。そして、これらの諸法令・諸規則等は、全体として証券取引における法的秩序、公の秩序を構成しており、これらに違反した行為は社会的相当性を欠くものとして、私法的にも違法の評価を免れないものである。しかるに、本件取引には次のような法令規則違反があり、不法行為に該当する。

(1) 適合性の原則違反

<1> 「投資者本意の営業姿勢の徹底について」(昭和四九年一二月二日蔵証二二一一号)」は次のように定めている。

ア 投資者に対する投資勧誘に際しては、投資者の意向、投資経験及び資力などに最も適した投資が行われるよう十分配慮すること。

イ 証券会社はそれぞれ取引開始基準を作成し、この基準に合致する投資者に限り取引を行うこと。

<2> 「株式店頭市場の適正な運営について(昭和五八年一一月一日蔵証一四〇四号)は次のように定めている。

「特に店頭市場における投資勧誘に当たっては、店頭取引に伴うリスクに耐えうる投資者のみを対象とし、また、投資者の合理的判断に資するため、店頭市場及び登録制度の仕組み、登録銘柄の内容等に関する的確な情報を提供するとともに投資者の意向、投資経験及び資力などに最も適した投資が行われるように十分配慮すること。」

<3> カントリーファンドのように国内店頭における相対取引においては、証券会社が自己の判断で売買価格を決定することができ、顧客の犠牲で証券会社が利益を計ることが可能である。そこで、公正慣習規則第一号店頭株式売買規則は、「協会員は登録銘柄及び店頭転換社債以外の店頭有価証券については顧客に対し、投資勧誘をおこなってはならない。」(三六条)、「店頭有価証券について顧客から自発的に売付または買付の注文があったときは、営業責任者の承認を得てその注文を受けるものとする。」(三七条)と定めている。

<4> 前記公正慣習規則の解釈として、登録銘柄ではないカントリーファンドについては、顧客に投資勧誘をおこなってはならないこと、店頭有価証券については、顧客から自発的に取引の注文があったときのみ受け付けることという結論が導かれる。したがって、被告がオーストリアファンドについて投資勧誘したこと自体が公正慣習規則に違反し、適合性の原則に違反する。

(2) 説明義務違反

公正慣習規則第一号第三八条は、協会員は、顧客に対し、店頭取引の仕組み等について十分説明するとともに、店頭取引の開始に際しては、顧客の判断と責任において店頭取引を行う旨の確認を得るため、当該顧客から店頭取引に関する確認書を徴求するものとすると規定し、また、同規則第四号第六条は、協会員は、外国証券の取引の注文を受けるに当たっては、顧客に対し、外国証券については我が国の証券取引法による企業内容の開示は行われていない旨を説明するものとすると規定している。

ところが、被告会社従業員は、店頭取引の仕組みやカントリーファンドの内容、取引の仕組み、ハイリスクの商品であることなどについて全く説明しておらず、説明義務に違反することは明かである。これらを説明せずに、確認書に署名押印させても、説明義務を尽くしたことにはならない。

(3) 断定的判断の提供による勧誘の禁止違反

証券取引法第五〇条一項一号は、「有価証券の売買・・に関し、有価証券・・の価格が騰貴し又は下落することの断定的判断を提供しては勧誘する行為」を禁止している。

しかるに、被告会社従業員は、原告に対し、「一週間か二週間で二〇パーセントから三〇パーセントの利益が間違いなく得られます。」と断定的判断を提供してオーストリアファンドの購入を勧誘したものであり、右行為が違法であることは明かである。

(4) 大量推奨販売の禁止違反

証券会社が、特定の銘柄を一定期間継続して顧客に売り込む推奨販売は、<1>証券会社の手持在庫を捌くという証券会社の利益のためだけになされる、<2>顧客の意向や財産状態を配慮せずに勧められるという顧客の犠牲においてなされる、<3>推奨販売実現のため株価操作をはじめ種々の違法行為がなされる危険性がある等の弊害がある。そのため、改正証券取引法第五〇条一項五号、公正慣習規則第九号、投資勧誘規則八条は明確にこれを禁止し、「協会員は、顧客に対し、主観的又は恣意的な情報提供となる特定銘柄の有価証券の一律集中的推奨をしてはならない」(右規則八条)と規定している。

しかるに、被告会社は、高崎支店ぐるみでオーストリアファンドの一律推奨販売をし、多数の顧客に損害を与えたものであって、違法性は明かである。

(5) 不正の手段、技巧をなすことの禁止違反

証券取引法第一五七条一号は、「不正の手段、計画又は技巧をなすこと」を禁止している。

しかるに、本件において、被告会社従業員は、値動きという最も重要な情報、しかも被告会社に頼るしかない情報について、事実に反し、「ストップ高が続いている。」などと虚偽の事実を提供した。

(6) 売却指示違反

前述のように、原告が被告会社従業員に対し、オーストリアファンド全部を売却するよう指示したのに、被告はこれに従わなかった。

以上のような被告の行為が不法行為を構成することは明らかである。

被告は、従業員である土屋が被告会社の業務を行うに当たって右不法行為をなしたものであるから、被告会社は使用者として右不法行為によって原告が被った損害を賠償すべき義務がある。

2 原告の損害

原告は、前記買付金及び手数料の合計金二三三四万七九九六円の損害を被ったほか、被告が原告の右金員の返還請求に応じないので本件訴訟を提起せざるを得なくなったが、原告代理人らと弁護士費用として二〇〇万円を負担することを約した。右費用も右不法行為と相当因果関係にあるので、原告は被告に対し、右合計二五三四万七九九六円とこれに対する不法行為の日である平成二年一月二三日から支払い済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

3 時効の主張に対する反論

原告が、土屋に騙されて本件取引をなしたのは平成二年一月一八日であるが、右購入代金を送金して支払ったのは同年一月二三日であり、その日が損害発生日である。そして、原告が、土屋に騙されたと知ったのは平成二年二月六日以降のことであり、平成五年一月一四日、原告の代理人高坂隆信が同日付け内容証明郵便をもって前記払込金二三三四万七九九六円の支払いを被告に請求し、右書面は同年一月一八日に被告に送達された。そして、原告は、それから六か月以内である同年二月四日に本件訴訟を提起したので、消滅時効は同年一月一八日に中断した。したがって、いずれの点からしても、消滅時効は完成していない。

四  被告の主張

1 (詐欺行為)(仕切拒否)について

土屋は、原告主張のような詐欺行為や仕切拒否はおこなっていない。

2 (証券取引における公序良俗違反)について

大蔵省証券局長による通達は、大蔵大臣による行政的な監督であって「法規制」ではない。また、証券取引所の定款、証券取引所受託契約準則は、証券取引所の自主規制を定めたものであり、また、日本証券業協会の店頭株式売買規則等の公正慣習規則は、日本証券業協会の自主規制であって、いずれも「法規制」ではない。なお、各証券会社の各種取引開始基準が「法規制」に当たらないことはいうまでもない。

そして、各種の行政取締法規や証券業脇会の規則等の自主ルールは、それに違反した場合においても、それが直ちに不法行為上の違法性ありと評価されることになるわけではない。

(一) 適合性の原則違反について

原告主張の大蔵省証券局長通達が法規制でないことは前述のとおりであり、また、通達一四〇四号(株式店頭市場の適正な運営について)は、本邦の店頭市場への株式の登録申請(店頭公開)や、登録銘柄についての投資勧誘、その他本邦の店頭市場に登録された株式に関する通達に過ぎない。したがって、本邦の店頭市場へ登録されていないオーストリアファンドについて右通達は適用されない。

本件取引当時(平成二年一月一八日)、原告が主張する公正慣習規則第一号三六条及び三七条の規定は存在しなかった。なお、現行同規則は、

「本邦法人が、本邦内において発行する証券取引所に上場されていない株券、新株引受権を表示する証券または証書及び転換社債券の店頭取引を公正かつ円滑ならしめ」ることを目的とするものであって(同規則一条)、また同規則にいう「店頭有価証券」とは、「本邦法人が本邦内において発行する証券取引所に上場されていない株券」等を意味するものである(同規則二条一号)。したがって、そもそも本件オーストリアファンドは、同規則にいう「店頭有価証券」に該当せず、その適用の前提を欠く。

(二) 説明義務違反について

本件オーストリアファンドに公正慣習規則第一号の適用がないことは前述のとおりである。

また、原告は、本件オーストリアファンドの取引に際しては、証券会社にオーストリアファンドの商品性について説明義務が存在することを前提として、被告に説明義務違反の不法行為責任があると主張する。

しかしながら、投資家は、自己責任の原則のもと、自らの判断により、自らの資金で、各種投資商品に対して投資すべきものである。したがって、その判断の前提として、その投資対象の商品の内容や特性、その他必要と考える事項の調査をすべき責任ないし注意義務は投資家自身にある。投資家は、将来転売等をおこなうことによって利益を得ることを目的として投資をおこなうのであるが、投資である以上、それには大なり小なりリスクがあり、あるいは投資によって期待される利益にも大小があるのは当然である。それらの諸事情を勘案して、いかなる商品に、いかなる投資をするかを決定するのは、投資によって損益が帰属する投資家自身なのであるから、投資対象たる商品について調査すべき注意義務は投資家自身にあるのである。これに対し、証券会社は、投資家の注文に基づき売買注文の執行をし、あるいは店頭登録商品については売買に応じる立場にあるに過ぎず、投資家に対して、一般的に、投資商品の内容等について説明すべき義務などは負担していない。もちろん被告会社では、売買の注文を受けるに当たっては、投資家に対して、各種投資商品の内容、特性、その他様々な投資情報を提供している。しかし、これらは投資家に対するサービスとしておこなっているものであって、決して法律上の義務の履行としておこなっているわけではない。

(三) 断定的判断の提供による勧誘の禁止違反について

被告会社の従業員土屋は、原告に対し、原告主張のような行為はしていない。

(四) 大量推奨販売の禁止違反について

本件取引当時、原告主張の証券取引法五〇条一項五号の規定は存在せず、また、公正慣習規則九号八条に原告主張のような規定も存在していなかった。

(五) 不正の手段、技巧をなすことの禁止違反について

本件取引当時、証券取引法一五七条一号に、原告主張のような規定は存在していなかったし、土屋は、そのような行為をしていない。

3 消滅時効の主張

(一) 原告は、平成二年一月一八日に本件オーストリアファンドを買い付けた際に被告会社従業員土屋の勧誘に詐欺があったとして、不法行為に基く損害賠償を請求している。仮に、そうであるとしても、平成二年一月一八日から三年が経過しているので、原告の被告会社に対する損害賠償請求権は時効により消滅している。被告会社は右時効を援用する。

(二) 原告は、平成五年一月一八日到達の被告に対する内容証明郵便によって、被告に対し本件オーストリアファンドの買付受渡し代金二三三四万七九九六円の支払いを請求し、右送達の日から六か月以内に本件訴訟を提起したから、右内容証明郵便の到達によって、不法行為に基く損害賠償請求権の消滅時効は中断されていると主張するが、右内容証明郵便においては本件オーストリアファンドの買付契約の解除を理由とする原状回復請求について記載されているに過ぎず、不法行為に基く損害賠償請求については一言も述べられていない。したがって、右内容証明郵便の到達によっては、原告主張の不法行為に基く損害賠償請求権の消滅時効が中断することはない。

第三  判断

一  争点1及び2について

本件においては、本件取引の経過につき、原告と被告の主張が真っ向から対立しており、また、関係者の証言ないし供述も全く異なっている。そして、原告の主張を裏付ける証拠としては原告本人の供述が中心となっているので、関係者の証言ないし供述を明らかにしながら、原告の供述の信用性について検討することとする。

1 原告は本人尋問の結果中及び本件取引についてまとめた書面で要旨次のような供述をしている。

(一) 本件取引をするについては、土屋が電話で「めったに手に入らないものが野村証券として手に入った。現在野村證券の社内的にも、営業マンでこの物件をとりっこしている。やっと私の手に入ったんで、是非一つ甲野さんにお近づきになりたいので、買ってもらいたい」「一、二週間で間違いなく二、三〇パーセントの利益がのるから買っておいてください」と述べたので、これを信じて原告は買うことにした。

(二) その際、土屋は、オーストリアファンドがどういうものであるかについては全く説明せず、カントリーファンドという言葉も使わなかった。また外国証券であるとの説明もしなかったので、原告は国内の普通の株式であると思って買った。

(三) その後、買ってから三、四日して土屋から電話があり(甲一四では平成二年一月二五日に電話があったとある。)、あの日から毎日ストップ高(後にその意味を聞いたら概ね一〇パーセント高のことであることがわかった。)が続いているとのことだった。その後(甲一四では一月二六日)原告からも電話をしたところ、まだストップ高が続いており、現地では整理がつかない程であるとのことであった。

(四) 同年一月三一日に、原告から、土屋に電話したところ、まだストップ高が続いているとのことであったが、こんなに毎日上がるというのも不自然すぎるので、もうここで売ってくれとはっきり言った。

(五) 同年二月六日に、本件オーストリアファンドの売却代金が自分の口座に入金にならないので、原告が土屋に電話してその点につき確認したところ(なお、甲一四では、土屋の方から電話があったとされている。)、土屋は、ちょっとその件につきお話があるのでお伺いしますといって、原告のところに来た。そして、土屋は原告に対し、上司の佐藤博課長(以下「佐藤課長」という。)から、お客の問い合わせについては毎日ストップ高が続いていると答えるように指示されていたためにそのように答えたが、実際は値が上がっておらない旨述べ、嘘をついていて申し訳ないと謝った。

(六) そこで、佐藤課長と当時被告会社高崎支店の支店長であった和田城三郎(以下「和田支店長」という。)に担当者と一緒に来るようにいったが、同年四月一三日になって佐藤課長と土屋がやってきた。その際佐藤課長は自分が指示したことを認めて頭を下げた。さらに、同月一六日には和田支店長、佐藤課長、土屋の三人が原告方を訪れ、同様に原告に詫びた。

(七) その後は、いくら原告の方からそのことについて電話しても、被告からは全くなんの返事もなかったが、同年九月二六日に、和田支店長、佐藤課長、土屋の三人が原告方を訪れ、原告が本件取引につき支払った額より五〇〇万円損をしてもらえれば被告の方で処理するとの申出がなされた。しかし、原告はストップ高が九日も続けば倍近くなるとのことでその申出を断り、元金に利息を付けて返還するように要求した。

(八) その後、土屋や佐藤課長が転勤してしまったりして、この問題がうやむやにされるのではないかとの不安から、平成三年九月九日に、被告からの有価証券取引報告書の回答書に本件取引代金に金利をつけて返還するよう要求した。

2 これに対し証人土屋は次のように証言している。

(一) 本件取引は、自分が原告に対し電話で勧誘したものであるが、その際、オーストリアファンドはオーストリアの株式に投資をするために設立されたいわゆるカントリーファンドであること、アメリカのニューヨーク証券取引所に上場している外国株式で、単価はドル建てであり為替の影響を受けることなどを説明した。

(二) また、勧誘の理由としては、平成元年一一月にベルリンの壁が崩壊したが、オーストリアとドイツが東欧への投資の窓口となっている関係上、株式市場は活況を呈しており、充分値上がりが見込めると説明した。それに対し、原告の方から「二、三週間で利食えるのか」という質問をされたので、今の状況からすれば大丈夫ではないかと答えた。

(三) 本件取引後一週間位して、原告からオーストリアファンドの値動きについて問い合わせがきた。土屋がこれに対し、ほとんど変わっていないがオーストリアの個別市場では値上がりしているものもあるのでもう少し様子を見ようというと、原告はそうかと言っていた。

(四) 次に、平成元年一月末頃に、原告は電話で、またその後のオーストリアファンドの値動きを尋ねるとともに、そろそろ売れないかと言ってきた。これに対し、土屋が、少し価格が下がっているが、個別のマーケットでは、オーストリアの株は上がり傾向にあるのでもう少し様子を見ようと言うと、原告は、なかなか上がらないな、もう少し待つかと言っていた。土屋は、ストップ高が続いているなどと言ったことはないし、一月末に原告がオーストリアファンドの売り注文を出したことなどなかった。

(五) 二月に入ってから、オーストリアファンドの値が下がり始めたので、土屋は、原告に対し値動きを知らせ、説明するために電話をしたが、なかなか連絡が取れなかった。そのうちに、二月の中旬頃に、原告からまたオーストリアファンドの値動きについて問い合わせがあった。そのときには、土屋は、当時右価格は一株二〇ドルを割って一九ドルくらいに下がっていたが、その背景としては、アメリカの証券会社であるドレクセルバーナムランベール社が倒産して、その会社が、持っていたカントリーファンドを市場に売りに出すという噂が広がって、カントリーファンドの株価が値下がりしているということを説明し、もう少し様子を見たらどうかと勧めた。これに対し、原告は、なかなか上がらないけどしょうがないな、もう少し待つかと言っていた。二月の六日頃に、上司の指示で毎日ストップ高であるとうそをついたなどと言ったことはない。

(六) 原告が、オーストリアファンドの件についてクレームを付けてきたのは、同年四月一〇日頃で、電話で、なかなか値上がりしないじゃないか、もう待てないので買付の約定を取り消して買い付け代金を持ってこいとのことであった。土屋は、正式に約定をいただいているのでそれに応じることはできないと答え、上司である佐藤課長に報告した。

(七) そして、佐藤課長からすぐに原告方を訪問して状況をよく説明してくるようにとの指示を受けたので、同日土屋は原告方を訪れた。しかしながら、原告は不在で面会することができなかったので、四月一二日頃に再び原告方を訪れたが、その際も、原告は、本件買付の取消しを求め、土屋に対し、おまえで解決できないようだったら上司を連れてこいと言った。

(八) そこで、翌日である四月一三日に土屋は佐藤課長とともに、原告方を訪れたが、相変わらず原告は買付の取消しを主張し、これに対し、佐藤課長も正式な約定をいただいているので取消しはできないと答え、以後、この問題は和田支店長と佐藤課長が対応することになった。

以上の通り証言している。

3 また、証人佐藤博は、次のように証言している。

(一) その後、佐藤課長と、和田支店長は、同年五月一六日頃に、原告方を訪問したが、その際も原告はオーストリアファンドの買付を取り消し、代金を返すように要求したが、和田支店長もそれに応ずることはできないとして断った。そして、最終的には、原告は自分にとってはオーストリアファンドの金くらいはどうということはないので、そのままにしておくと言い、これに対し、和田支店長は、今後の取引の中で利益の出そうなものをお知らせしていきたいと述べた。土屋に嘘をつかせたことを認めたことなどない。

(二) 平成元年九月二六日に、原告に対し、被告会社のほうから、五〇〇万円損してもらえれば被告会社の方で処理するなどと述べたことはない。

(三) 平成二年一一月二一日に、和田支店長、佐藤課長、土屋の三人は、土屋の異動の挨拶と引継ぎのために原告方を訪れたが、その際には、本件取引のことについてはなにも述べられなかった。

(四) その後は、佐藤課長が原告の担当になり、平成三年五月二三日に転勤の挨拶と引継ぎのために原告方を訪れるまでに、過に一回くらい電話で連絡を取り、また、月に一回くらい原告方を訪問してオーストリアファンドの価格等について知らせたが、本件取引について特別な申入れはなされなかった。

4 以上の証言ないし供述を比較してみると、原告の右供述等は、次の点から直ちには信用し難い。

(一) 《証拠略》によれば、土屋は、昭和六二年一一月から被告会社高崎支店に勤務するようになり、それ以来原告の担当となって本件取引までに原告と二〇数件の取引をおこなっていることが認められるのであるから、本件取引を勧める動機として「甲野さんにお近づきになりたいので買ってもらいたい」などというのは不自然である。

(二) 原告は、ただ土屋が「間違いなく一、二週間で二、三〇パーセントの利益がのる。」と言ったと供述するのみで、なぜそんなに値が上がるのかについての土屋の説明については全く供述していないだけでなく、カントリーファンドという言葉も聞かなかったしオーストリアファンドがどんなものかも説明がなかった旨供述するが、原告が前記のような会社の経営者であり、しかも本件取引に至るまで相当数の株式等の取引をしていることからして、右の点について全く説明を受けないで二〇〇〇万円もの取引をするとは到底考えられず、原告の右供述は不自然というほかない。むしろ、土屋の、オーストリアファンドを勧める理由は当時の状況からするとそれなりに納得でき、そのような説明をしたであろうことは容易に推認できる。そして、その課程で、土屋が原告に対し、オーストリアファンドの値上がりの確実性についてかなり強く説いたのではないかとの疑いもないではないが、原告が供述するほど断定的であったとまでは認めるに足りない。そして、断定的であるか否かは、単に一つの言葉だけを切り離して判断することはできず、その時の言葉のやりとりや、投資者の知識経験等を総合して判断する必要があるというべきところ、原告の知識や経験からして、仮に、土屋が理由も述べずただ前記のような言葉を口にしたからと言って、直ちにそれを信じたとは考えにくい。

(三) 原告は、平成二年一月三一日の時点でも、土屋はオーストリアファンドの価格がストップ高を続けている旨述べたと供述しているが、乙五によれば、本件株式の価格は、原告が取得した平成二年一月一八日の時点で一株二四ドル三七セントであり、同月三一日には二三ドル七五セントと少し下がっていることが認められるのであって、この時点で原告から株価を聞かれた際に、自分が勧めた株が値下がりしていることからして、正直に言いにくいという心理が働くであろうということは理解できるにしても、毎日ストップ高が続いているというのはあまりに不自然であり、事後処理に困難を来すであろうということは容易に推認できることからすると、そのような不自然なことを言ったとは考えにくい。

(四) 原告は、同年二月六日に、土屋が、ストップ高が続いていたというのは嘘であり、上司の指示に従って嘘をついたと述ベたので、上司を連れてこいと言ったにもかかわらず同年四月一三日までこなかった旨供述する。しかし、もし仮に、それが真実であるとすれば、通常であれば直ぐに原告の方から被告会社に赴くのが普通であり、四月まで原告が被告会社に行かなかったとは考え難いだけでなく、《証拠略》によれば、原告は同月二〇日に、土屋を通してオーストリアの株式であるヴァイネルベルガーの株式五〇株を四五六万四一二五円で買い付けていることが認められるが、もし原告の右供述が真実であるとすれば、本件取引の件が解決もしないのに、右のような取引をするとは考え難く、原告の右供述はこの点でも不自然というほかない。

(五) さらに、《証拠略》によれば、被告会社においては、月次報告書という取引の明細を記入した書類(そこに証券残高の明細が記載されており、本件株式も記載されている。)を顧客に郵送し、それに対する回答(明細書に記載されている証券が被告会社に預けてある有価証券に間違いない旨記載されている。)が顧客から被告会社に送られてくる仕組みになっているが、原告が仕切り拒否をされたと供述する平成二年二月六日以降も平成三年九月一二日に被告会社に郵送されたものの前までは、原告はなんの異議も記載せず署名捺印して被告に郵送していることが認められるが、もし仮に、真実株式売却の指示を出し、しかもそれを拒否されたというのであれば、直ちに、その後もその株がまだ被告に預けられたままになっていることについて異議を述べるはずであり、一年半もそのままにしておくというのは不自然というほかない。

証人土屋及び佐藤の証言は、右に認定した間接的事実にも符合し、自然であるのに対し、原告の供述等は右に指摘したように不自然な点が多く信用し難い。そして、他に原告が主張するような、土屋が、一、二週間で必ず三〇パーセント利益がのると虚偽の事実を断定的に示した事実、毎日ストップ高が続いているとの虚偽の事実を述ベたという事実及び原告の本件株式の仕切を拒否したという事実を認めるに足る証拠はない。

なお、原告代理人は、原告はこれまで被告との株取引をして損失を生じた際にもそれについて被告にクレームを付けたことなど無いにもかかわらず、本件については一貫して右事実を主張して抗議していることからして原告の供述は信用性がある旨主張する。

確かに、乙二によれば、原告は、本件取引以前にも昭和六二年九月一日の東京電力の株で二〇〇〇万円を超える損失を出したことが認められるにもかかわらず、被告に対してクレームを付けたという事実は本件全証拠によっても窺えない。しかしながら、そうであるからといって、本件の取引に関する原告の供述が信用性があるということにはならない。例えば、《証拠略》によれば、原告は、本件訴訟を提起した後、やはり被告を相手にワラントの取引に関して被告の不法行為により損害を被ったとして損害賠償請求の訴えを提起しているが、その本人尋問の結果中で、本件においては原告自身認めている被告との取引について、無断売買である旨供述したり、本件においても、被告と使用取引をしていることは明らかであるにもかかわらず、それを確かめられて「あるんですかね」などと答えていることからもわかるように、原告の供述にはその信用性に疑問を抱かずにはおられない部分が多い。また、本件の経過の中で、原告が被告に対して主張し、要求しているものの中には、例えば、《証拠略》によれば、原告は被告に対して、本件株式のみならず、前記ヴァイネルベルガーの株式についても買付代金に利息を付して返還することを求めていることが認められるが、右取引についてはそれまでなんの問題も提起されていなかったにもかかわらず、突然にその解約を主張していることになるのであって、これは理由のない明らかに不合理な要求であるというほか無い。

以上のとおりであるから、原告の詐欺及び仕切拒否を理由とする不法行為の主張は理由がない。

二  争点3について

原告は、被告による本件取引が証券取引における公序良俗に違反し、不法行為に当たる旨主張するのでその点につき判断する。

1 まず、原告主張の断定的判断の提供による勧誘の禁止違反、不正の手段、技巧をなすことの禁止違反の主張については、前判示のとおり、前提となる事実が認められないので、その点については判断するまでもなく理由がない。

2 適合性の原則違反について

《証拠略》によれば、原告主張の各大蔵省証券局長の通達(「投資者本意の営業姿勢の徹底について」昭和四九年一二月二日蔵証二二一一号及び「株式店頭市場の適正な運営について」昭和五八年一一月一日蔵証一四〇四号)が存在し、原告主張の規定が存在する。しかしながら、大蔵省証券局長の通達は、大蔵大臣による行政的な監督であり、それに違反したからといって直ちに不法行為法上の違法性があるとは認められるわけではなく、さらに、実質的に民法上の不法行為として損害賠償請求を是認する程度の違法性があるか否かを判断する必要がある。ところで、右通達一四〇四号は、本邦の店頭市場への株式の登録申請(店頭公開)や、登録銘柄についての投資勧誘、その他本邦の店頭市場に登録された株式に関する通達に過ぎず、したがって、本邦の店頭市場へ登録されていない本件オーストリアファンドについてはそもそも右通達は適用されないものである。また、前記証拠によれば、現時点においては、原告主張の公正慣習規則第一号店頭株式売買規則が存在し、その三六条、三七条には原告主張のような規定が存在する。しかしながら、弁論の全趣旨によれば、本件取引がおこなわれた平成二年一月一八日時点においては、右規則三六条、三七条は存在しなかったことが認められるばかりでなく、現行の同規則は、「本邦法人が、本邦内において発行する証券取引所に上場されていない株券、新株引受権を表示する証券または証書及び転換社債券の店頭取引を公正かつ円滑ならしめる」ことを目的とする (同規則一条)ものであって、同規則にいう「店頭有価証券」とは、「本邦法人が本邦内において発行する証券取引所に上場されていない株券」等を意味する (同規則二条一号)ものであるから、そもそも本件オーストリアファンドは、同規則にいう「店頭有価証券」に該当しない。そうであるとすれば、右各通達ないし公正慣習規則違反の理由をもってしては本件取引が不法行為に該当するとはいえない。また実質的に見ても、原告は、前記原告の社会的地位、経済力、証券取引についての知識、投資経験等からして、店頭取引に耐えうる投資者といいうるし、また、被告会社の従業員がそのような原告に対して投資勧誘をしたからといってそれが不法行為に該当するとまではいえない。したがって、原告の適合性の原則違反の主張は理由がない。

3 説明義務違反について

《証拠略》によれば、公正慣習規則第一号第三八条には、原告主張の規定が存在することが認められるが、右規則第一号が本件オーストリアファンドに適用がないことは右判示のとおりである。そこで、実質的に本件取引において被告に説明義務が存在したのか否か、存在したとすればその義務を尽くしたといえるか否かにつき検討するに、一般的には、証券取引は投資であるから本質的にリスクが伴うものであり、したがって、それによって利益を追求する投資者自身の責任においてそのリスクの程度を判断し、投資すべきか否かあるいは投資の額等を決定しなければならず、そのための投資対象についての調査も基本的には投資者自身の責任においておこなわなければならないというべきである。しかしながら、他方、証券会社も投資者に対し投資対象たる商品を提供することによって利益を得ているだけではなく、一般的には投資者よりも豊富な知識と情報を有しているものであるから、自らが投資者に勧誘をおこなうに当たっては、投資者が誤った判断をしないようできるだけ的確な情報を提供すべき信義則上の義務があるものというべきである。そして、証券会社の説明義務が右のような観点から肯定されるものである以上、その義務の内容あるいは程度は、具体的な当事者ごとによって異なるものであって、一律に判断されるべきものではない。

本件においてこれを見るに、《証拠略》によれば、土屋は、原告に対し、本件オーストリアファンドを勧めるに際しては、アメリカのニューヨーク証券取引所に上場されている外国株式であること、単価はドル建てで為替の影響を受けること、オーストリアファンドは、オーストリアの株式に投資するために設立された、いわゆるカントリーファンドであること、カントリーファンドとは、会社型の投資信託で、ある特定の国の株式に投資することを目的として設立された株式会社であり、投資家は、その株式を売買する仕組みになっていること、オーストリアは、ベルリンの壁の崩壊後、東欧諸国への投資の窓口になっているため、発展が期待されていることなどの説明をしたこと、土屋は、平成元年の一〇月頃にも、原告に対し、同じカントリーファンドであるタイプライムファンドの買付を勧めており、その際にもカントリーファンドの説明をしていること(なお、この時は原告の方でこれを断った。)などが認められ、右事実と前記原告の投資経験等からすれば、土屋は説明義務を果たしているものと認められる。確かに、土屋は、原告に対し、本件取引が相対取引であること、一株当たりの純資産額がいくらであるか等については原告に説明しなかったことが認められるが、本件においてはそこまでの説明義務があるとは認め難く、少なくともそれを怠ったことが不法行為に該当するほどの義務違反とはいい難い。

よって、原告の説明義務違反の主張も理由がない。

4 大量推奨販売の禁止違反について

証券取引法五〇条一項五号は、証券会社は、特定かつ少数の銘柄の有価証券について、不特定かつ多数の顧客に対し、買付けもしくは売付けまたはその委託を一定期間継続して一斉にかつ過度に勧誘する行為で、公正な価格形成を損なうおそれがある行為をしてはならないと規定しており、甲二六によれば公正慣習規則第九号、投資勧誘規則八条は「協会員は、顧客に対し、主観的又は恣意的な情報提供となる特定銘柄の有価証券の一律集中的推奨をしてはならない。」と規定していることが認められる。

しかしながら、右規定は、本件取引当時には存在していなかったものであるだけでなく、本件全証拠によるも、被告会社は高崎支店ぐるみで本件オーストリアファンドを一斉にかつ過度に勧誘したと認めるに足る証拠はない。よって、原告の大量推奨販売の禁止違反の主張も理由がない。

(裁判官 高田健一)

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